私は、東芝の医用機器を輸出販売していた関係上、有名な医者に会う機会が多かった。
その中の一人に白壁先生がいた。
多くの人は、この先生の前に出ると、ボロクソに怒られていた。
みんなビクビクして、先生に会いに行く。
ところが、先生には眼力があって、たちどころに弁解がましい人間は怒鳴りつけられる。
私の場合は、なぜか違っていた。
最初から怒られることはなかった。
その白壁先生と4~5回海外旅行を一緒にしたことがある。
トルコに行ったとき、昼の3時になると、
「佐藤さん、お茶にしませんか」、
と言ってくる。
「佐藤さん、私にはチーズケーキをご馳走してくれませんか」、という。
チーズケーキを食べながら、
「佐藤さん、ここのチーズケーキはおいしい」、
といっていたのを覚えている。
この先生、ときどき、素晴らしいことを言う。
「佐藤さん、医者、芸者、役者はおんなじなんです。」
「みんな、演技が必要なのです。」
ある時、飛行機に乗っていたら、何やら、描いている。
「先生、何をしているんですか?」
「ピカソの絵をまねて描いているんです。」
「ピカソは、立体を平面に表現するために大変努力した人なのです。」
「私も、レントゲン写真をいかに立体的に表現するかを研究しているのです。」
「ところで、佐藤さん、レントゲン写真を撮るのに何が必要かわかりますか?」
「フォーカスすることです。これは何にでも共通です。フォーカスしなければ何も見えません。」
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